年頭にあたって
本年もよろしくお願い申し上げます。
日本では正月休みも終わりましたが、海外に目を向けると、その間いつもと変わりなく動いていた国もあります。例えば、西暦以外の暦を採用しているイスラエルからは、元旦にメールが普通に送られてきたりします。もちろん、このようなことは正月休みに限ったことでなく、普段の祝日などにも見られます。そして、この彼我の「休みのずれ」もまた、法律で定められた絶対的な期限を扱う私たちにとっては、非常に気を遣うところです。期限の前日に連絡したものの、相手が休みで対応できなかった、では困りますので。また、本来の期限がその国の休日に当たれば、翌日(翌日が休日なら、その翌日)まで期限が延長されるため、法定の休日か否かは期限自体にも大きく関係します。
外国との間で仕事をする場合、国ごとに文化や風習が異なる以上、何らかの形でその影響を受けるのは必然です。ただ、特許は経済と密接に関係し、経済は政治に多かれ少なかれ左右されます。そのため、特許に関わる様々な制度的変化を介して、各国におけるその時々の政治経済がもたらす影響みたいなものを、少なからず、日々の業務の中で感じることができます。
韓国では昨年、特許法が改正され、審査遅延による特許期間の延長制度が導入されました。この制度は、審査が遅れた場合に、その遅れた分だけ特許権の存続期間を延長できるようにするものであり、米国との間でFTA(自由貿易協定)が締結されたことに伴い、米国にそれまであったルールが韓国の特許制度に反映されました。
日本でも今から20年近く前に、「外国語書面出願」という制度が新たに設けられました。文字通り、日本語だけでなく外国語でも特許出願できるようにしたものですが、この制度も、日本語による特許出願を認めている米国からの要望を受けて導入されました。「外国語」と言いながら、現在認められているのは「英語」だけであることが、その端的な表れです。
当の米国でも、今年の3月から特許制度が大きく変わります。特許というものに対する基本的な考え方の違いとして、「先発明主義(先に発明した者に特許を与える原則)」と「先願主義(先に出願した者に特許を与える原則)」がありますが、世界の大勢に従って、米国もようやく後者へと(完全にではありませんが)移行することになりました。これまで頑なに先発明主義を守っていた米国を突き動かした背景は複雑ですが、昨今の景気後退といった経済的な要因(先発明主義は一旦紛争になると、一般的に、コストが非常にかかります)もその一つのようです。
昨年末の政権交代を受け、我が国の政治経済を巡る情勢は依然混沌としており、それが今後、特許、あるいはもっと広く言えば「知的財産」を巡る諸制度にどのような形で影響を及ぼすか、予想するのは容易でありません。ただ、知財に携わる人間の一人として、少しでもこの業界が、延いては日本の経済全体が活気づく方向で変化が起きることを期待するとともに、自分自身も同じ方向に向かって、今年一年取り組みたいと思います。