米国IT業界の特許争い
世界知的所有権機関(WIPO)事務局(スイス・ジュネーブ)で、スティーブ・ジョブスの特許展が開かれています(3月29日~4月26日)。iPodなどのデザイン特許(日本でいう意匠登録)が多いようですが、携帯電話のデータバックアップや料金決済システム等の技術特許も、他の発明者と共同で多数出願しているようです。やはり、何から何まで自分でやらないと気が済まない性格だったようですが、特許の重要性は明確に認識していたことが分かります。
少し前に、Yahoo米国本社がFacebookを特許侵害で訴えたという記事が出ていました。広告方法、プライバシー情報管理、ソーシャルネットワーキングに関するYahooの10件の特許を侵害しているとの主張のようです。それに対しFacebook担当者は、「理解できない行動だ。当社とは長いつきあいがあり、それにより利益を得ているはずなのに。」とのコメントを出しました。ずいぶん日本的なコメントのように聞こえましたが、その半月後には、やはり、今度はFacebookがYahooを同じく10件の(偶然でしょうか?)特許侵害で訴えたという記事が出ました。
そして、Yahooを訴える直前ですが、FacebookがIBMから750件の特許を取得したとの記事が出ていました。一昨年(2010年)には、Googleが同じくIBMから1000件あまりの特許を取得したようですし、ほぼ同時期にGoogleがMotorola Mobilityを買収したのは同社の特許(出願中のものも含め、約2万5千件と言われています)が目的であると報じられています。
一時期、日本でも電機業界を中心に大量の特許出願・特許取得がなされ、特許の数で会社を守るという戦略が採られていた時期がありました。しかし、日本の特許出願件数は2001年をピークに(2004-2005年に一時持ち直したものの)徐々に下がり続け、2010年はピーク時の8割弱にまで低下しています。この間、主要国(米国、中国等)の特許出願件数はほぼ増加の傾向にあります。
米国IT業界の最近の特許に関する争いは一時期の日本のシーンの再現と見ることもできますが、訴訟社会と言われる米国だけに、争いはより熾烈なものとなると思われます。そして、訴訟に至るかどうかは別としても、日本が世界の技術競争から取り残されないためにも、特許の重要性を再認識すべきだと思います。