退職代行
近頃はやりの仕事のようです。
私も比較的若い頃に退職した一人ですが、退職したのは40年前で、環境は今とはずいぶん違っていました。
多くの会社の経営は家族的で、大企業でも同じです。従業員は定年までその会社で働くのが前提で、会社は従業員の私生活、家族をきめ細かく面倒見てくれました。秋には社内大運動会が開かれ、季節季節には部署毎に忘年会・新年会、旅行会などが行われました。上司は部下の縁談の世話も仕事の一つでしたし、上司の世話にならずとも社内結婚は自然と多くなっていました。
私は社内結婚ではありませんでしたが、仲人(若い人に分かるでしょうか)は当然のごとく上司の部長にお願いしました。
12年半勤務して会社を辞めるとき、一番困ったのが、仲人さんへの説明でした。その時には仲人さんは副社長になっておられました。まずは仲人さんに長い手紙を書き、その手紙が着いた頃に自ら副社長席に出向いて事情を説明しました。幸い、理解をいただき、その後、上の方から順に上司各位に説明してまわり、最後に人事部に行って退職願を提出しました。その後も、関連の会社をいくつか回り、お付き合いのあった担当者に挨拶をして回りました。或る会社のほぼ同年代の技術者は、「大丈夫ですか?」と真剣に心配してくれました。
退職の動機は、どちらかと言うと「モームリ」という理由だったのですが、このように丁寧に手順を踏んだことで、退職間際には所属部署や入社同期会が送別会をしてくれて、気持ちよく送り出してくれました。数年前に突然電話がかかってきて、その同期会をやるので参加しないかとのお誘いがありました。退職後35年目の再会は大いに盛り上がりました。
今は転職前後の経済的落差も小さくなり、退職ということ自体に対する社会的理解も変わって退職も容易になったようですが、退職代行が流行るということは、本人にとって退職時のハードルが相変わらず高いということでしょう。ただ、別の職場に変わるにせよ、新たな関係性が生まれざるを得ませんので、退職前の会社で、人に頼まず、自分で社会との付き合い方について最後の練習をしておいた方が良いように思います。