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2019/02/18弁理士ブログ

後知恵

昨年の10月から始まった朝の連続テレビ小説「まんぷく」は、皆さんもご存じのように、日清食品の創始者である安藤百福氏とその妻である仁子(まさこ)さんの半生をモデルにしたドラマです。

安藤百福氏の半生、ということでしたので、てっきり、あのインスタントラーメンにまつわる話ばかりかと思っていたらとんでもない。インスタントラーメンに至るまでに、安藤百福氏は、実に様々な製品や方法(根菜切断器、塩の作り方、健康食品・・・と、本当に様々です)を開発していたようで、昨年いっぱいは、ラーメンとは全く関係のないところでドラマが進行し、年が明けてようやく世界初のインスタントラーメンの開発がスタートしました。スタートしたとはいえ、インスタントラーメンが完成するまでの道のりは長く、失敗しては新しい方法を試みる、というシーンがドラマでは繰り返されます。そのため、答えを知っている私は、失敗作を味見してがっかりしている主人公夫婦の姿を見て、ヤキモキすることになります。

すばらしい発明であっても、答えを知ってしまうと、いとも簡単にできたもののように見えてしまうことがあります。特許の世界では、このようなことを「後知恵」と呼びます。「後知恵」は、特許要件の一つである「進歩性」の判断の際に、審査官が陥り易い過ちであり、これを防止するため、特許・実用新案審査基準に次のような記載があります(特許・実用新案審査基準の第三部第2章第3節「新規性・進歩性の審査の進め方」)。

「審査官は、請求項に係る発明の知識を得た上で先行技術を示す証拠の内容を理解すると、本願の明細書、特許請求の範囲又は図面の文脈に沿ってその内容を曲解するという、後知恵に陥ることがある点に留意しなければならない。引用発明は、引用発明が示されている証拠に依拠して(刊行物であれば、その刊行物の文脈に沿って)理解されなければならない。」

言い換えると、私たち弁理士も、審査官が「後知恵」に陥っていないかどうか、拒絶理由通知を検討する際に見極める必要があるといえます。

さて、そんな「まんぷく」も、インスタントラーメンが完成し、いよいよ販売がスタートします。この先、どんなドラマが待っているのか、あとひと月余り。楽しみたいと思います。

市岡 牧子

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